- 薬学ブートキャンプ -
高脂血症 |
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早朝空腹時採血において、血清中の総コレステロール(TC)または中性脂肪(TG)が それぞれTC220mg/dl以上、TG150mg/dl以上になるものを 高脂血症と定義するんだ!! 基準値、大切だから覚えておくんだぞ! 総コレステロール(TC) 220mg/dl以上 中性脂肪(TG) 150mg/dl以上 ちなみにTCはトータルコレステロール,TGはトリグリセリドの略、 高脂血症の”脂”っていうのは、脂質、つまりコレステロールや中性脂肪のことなんだ。 ちなみに、なんで高脂血症だといけないんだろう? TCやTGが多いとどうしていけないのかっていうと、 それらが動脈壁に沈着して動脈硬化を引き起こすからなんだ! よって、高脂血症治療の目的は動脈硬化性疾患の予防ということだね。 高脂血症には、遺伝性の高脂血症(原発性高脂血症)と 糖尿病、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群などの種々の疾患、 薬剤や過食、アルコールの過剰摂取などで引き起こされる二次性高脂血症があるんだ。 さあ、それじゃあまずは高脂血症を語るにおいて重要なキーワードとなるであろう 『 リポ蛋白 』 についての説明からはじめるからね。 リポ蛋白ってよく聞く言葉だけど、実際なんのことかわかっている人って少ないんじゃないかな? ええと、まず高脂血症っていうのは血中のTCやTGが増加している状態のことだったよね? これらのTCやTGなんていう脂質は、血中に単独に存在しているわけではないんだ。 蛋白質と結合して存在しているんだ。 この蛋白質とTC、または蛋白質とTGが結合したもの、 これをリポ蛋白っていうんだ。 したがって、高脂血症っていうのは、厳密にいうと、 血中の特定のリポ蛋白が増加した状態と言うことができるな! そんなリポ蛋白は比重によって軽い順に カイロミクロン CM 超低比重リポ蛋白 VLDL 中間比重リポ蛋白 IDL 低比重リポ蛋白 LDL 高比重リポ蛋白 HDL に分類されている。 この中で、高脂血症において重要なのはLDLとHDLだ! LDL中のコレステロール(LDL-C)は、動脈壁に沈着して動脈硬化を引き起こす悪い奴で 別名、悪玉コレステロールと呼ばれている。 HDL中のコレステロール(HDL-C)は、動脈壁に沈着した悪のLDLを除去する働きがあるので 別名、善玉コレステロールと呼ばれているんだ。 HDL-Cは正義、LDL-Cは悪! ・・・・・というふうに覚えてしまっていいと思うぞ。 さあ、これらをふまえて、いよいよ次は高脂血症の治療についてトレーニングしていくぞ! 基本的には生活習慣の改善を行うが、それで駄目な場合には薬物療法だ! 高コレステロール血症治療薬と高TG血症治療薬に分けて覚えていくからね! 高コレステロール血症と高TG血症は合併することがよくあることも頭に入れておいてくれ! それじゃあまずは高コレステロール血症治療薬から!!この四つです。 ・スタチン系製剤 ・陰イオン交換樹脂 ・ニコチン酸誘導体 ・プロブコール 第一選択薬は、HMG-CoA還元酵素阻害薬である、スタチン系製剤と呼ばれるものだ。 プラバスタチン(メバロチン)やシンバスタチン(リポバス),フルバスタチン(ローコール), アトルバスタチン(リピトール)くらいの名前は覚えておいたほうがいい。 コレステロールは肝臓で合成されるんだけど、どういう風に合成されるか簡単に説明すると、 アセチルCoA → メバロン酸 → コレステロール というふうに合成されていくんだ。 この中の、アセチルCoAからメバロン酸への変化を触媒する酵素がHMG-CoA還元酵素なんだ。 また、HMG-CoA還元酵素はコレステロール合成系の律速酵素でもある。 この酵素を阻害することによって、血清コレステロール値を強力に低下させることができるんだ! これがHMG-CoA還元酵素阻害薬、いわゆるスタチン系製剤の作用だ!! 副作用の横紋筋融解症は有名だね!注意せよ!! お次は陰イオン交換樹脂 と呼ばれるものだ! これには、コレスチラミン(クエストラン)やコレスチミド(コレバイン)がある。 コレステロールは胆汁に溶けて効率よく吸収されるんだけど、 これらの陰イオン交換樹脂は、その胆汁酸を腸管内で吸着してしまうことにより、 胆汁酸の腸管からの再吸収を抑制し、胆汁酸を腸管の中から糞中へ追い出してしまうんだ! そうすることによって、腸管内でのコレステロールの吸収を抑えられるし、 他にも、胆汁酸の減少を補うために肝でコレステロールから胆汁酸への異化が亢進し、 血中コレステロールを低下させる効果も期待できるんだ! (生体内で胆汁酸はコレステロールから生合成されている。) このような作用機序なので、 完全な胆道の閉塞により胆汁が腸管に排泄されない患者には禁忌だからね!わかるね? また、重大な副作用として、腸閉塞があるから、 高度な便秘や持続する腹痛、嘔吐などの症状が見られた場合は、 薬を中止するということも覚えておくんだ! はい次、三つ目! ニコチン酸誘導体 。 ニコモール(コレキサミン)やニセリトロール(ペリシット)なんかがあります。 消化管からのコレステロール及び中性脂肪の吸収を抑制します。 さらに、血小板凝集抑制作用を有するのも特徴かな。 はいはい、四つ目! プロブコール(シンレスタール,ロレルコ)ですね。 これは、コレステロールの胆汁中への異化排泄促進作用のほか、 コレステロール合成の初期段階も抑制するんだ。 以上が高コレステロール血症治療薬でしたぁ!次は高TG血症治療薬だね。 この二つだけ覚えようか。 ・フィブラート系 ・ニコチン酸誘導体 ははは。ニコチン酸誘導体はさっきでてきたね。 消化管からのコレステロール及び中性脂肪の吸収を抑制するからね。 高TG血症にも使えるんだ。 あとはフィブラート系の説明だけだね。フィブラート系の薬剤には、 ベザフィブラート(べザトールSR,ベザリップ)、クロフィブラート(ピポセロール)、 フェノフィブラート(トライコア,リピディル)などがある。 フィブラート系の薬剤は、脂肪細胞での脂肪分解を抑制して脂肪酸を減少させ、 肝が利用できる脂肪酸量が減少する結果、コレステロール及びTGの合成を阻害するんだ! (ただし、コレステロールよりTGの方を多く下げる。) また、リポ蛋白リパーゼ(リポ蛋白を代謝する酵素)活性化及び、LDL受容体活性化による リポ蛋白(LDL)の代謝を促進する効果もあるからな! 結構強力だぜ!! スタチン系と同様にフィブラート系にも 重大な副作用として横紋筋融解症があるからこれも覚えよう。 ということで、一通り薬剤の説明が終わりました。 よしっ、それじゃあ一度、いままで出てきた各薬剤を軽く復習をしてみようか! スタチン系(プラバスタチンなど)はHMG-CoA還元酵素阻害 陰イオン交換樹脂(コレスチラミンなど)は胆汁酸を腸管内で吸着 ニコチン酸誘導体(ニコモールなど)は消化管でのコレステロール及び中性脂肪の吸収を抑制 プロブコールはコレステロールの胆汁中への異化排泄促進作用 フィブラート系は脂肪細胞での脂肪分解を抑制 さあ、大丈夫かな? ちなみに、最初のほうで、高コレステロール血症と高TG血症は合併することがよくある っていうことも言ったよね。おぼえてる? 合併している場合には今まで説明したような薬剤をうまく組み合わせて治療していくんだけど、 ここで注意しなければならないのが、スタチン系とフィブラート系の併用なんだ。 どちらも強力な作用があるんだけど、共通の副作用として横紋筋融解症がある。 これらの併用により、横紋筋融解症が起こりやすくなるから、 原則併用禁忌となっているぞ! 特に、腎障害をもった患者さんでは横紋筋融解症が発現しやすくなっているので 十分な注意が必要だ!気をつけよう!! さあて、少し長くなったがこれが今日のまとめだ!もう一度確認してみてくれ!!
今日のプログラムはこれで終わり! お疲れさん! はぁ、、、、、、疲れた。
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